日商簿記検定の迅速な獲得方法

経理や会計の知識を証明する代表的な簿記検定には、「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」の3種類があります。名称が似ているため、それぞれの特徴や違いが分かりにくく、「どの資格を取得すればよいのだろう」と悩む方も少なくありません。

実際には、それぞれの検定で受験対象や試験内容、求められる知識の範囲に違いがあります。そのため、自分の学習状況や将来の目標に合わせて適切な試験を選ぶことが大切です。

本記事では、「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」の3つの簿記検定について、それぞれの特徴や難易度、級ごとのレベル、試験実施時期などを分かりやすく解説します。

① 日商簿記|知名度・実用性ともに高い代表的な簿記資格

簿記資格の中でも最も広く認知されているのが「日商簿記」です。一般的に「簿記の資格」と言われた場合、この検定を思い浮かべる人が多いでしょう。

日本商工会議所が1954年から実施している歴史ある資格試験であり、毎年多くの受験者が挑戦しています。2018年には年間約51万人が受験するなど、国内でもトップクラスの受験者数を誇る人気資格です。経理・会計職に従事している方はもちろん、これから経理分野への就職や転職を目指す方にも広く選ばれています。

また、多くの企業では日商簿記を高く評価しており、採用条件や昇進・昇格の判断材料、さらには資格手当の支給対象として採用しているケースもあります。そのため、実務で役立つ資格としてだけでなく、キャリアアップや転職活動を有利に進めるための資格として取得を目指す方が増えています。

各級の難易度や学習内容は?試験範囲・勉強時間の目安を解説

簿記初級

簿記初級は、従来の簿記4級が廃止されたことを受け、2017年から新たに実施されている試験です。簿記の基本用語をはじめ、企業の日常業務で使用される複式簿記の基礎知識を身につけているかが評価されます。

主な対象は経理担当者だけではなく、ビジネスの基礎知識を身につけたい社会人全般です。なお、決算処理に関する内容は試験範囲には含まれていません。

受験方法はインターネットを利用したネット試験方式となっており、日本商工会議所が認定するネット試験会場(商工会議所のパソコン教室や提携スクールなど)で受験します。

原価計算初級

2018年に新設された原価計算初級では、原価計算の基礎理論や基本的な計算方法について理解しているかが問われます。試験には原価計算に関する計算問題も出題されます。

以前は原価計算の内容は日商簿記2級以上で扱われていましたが、この試験では簿記を初めて学ぶ方でも無理なく原価計算の基礎を学習できる内容となっています。

3級(試験科目:商業簿記・会計学)

3級では、商業簿記の基本的な考え方を中心に、日常取引の記帳方法や決算書作成の流れなど、小規模企業を想定した会計処理について学びます。

経理職を目指す方だけでなく、事務職や営業職など幅広い職種の受験者にも人気があり、会計や簿記の基礎力を証明できる資格として高く評価されています。

合格までに必要とされる学習時間はおよそ100時間が目安とされており、初学者でも独学で十分に合格を目指せるレベルです。

2級(試験科目:商業簿記・会計学・工業簿記〈原価計算を含む〉)

2級では、3級までの商業簿記に加え、工業簿記や原価計算も試験範囲に含まれます。企業の経理業務に必要となる、より実践的で幅広い知識が求められる試験です。

経理・会計分野で専門職として活躍したい方にとって、取得しておきたい代表的な資格の一つと言えるでしょう。実務経験と組み合わせることで、就職や転職時の評価向上にもつながります。

一般的には、合格までに約200時間以上の学習時間が必要とされています。

1級(試験科目:商業簿記・会計学・工業簿記〈原価計算を含む〉)

1級は日商簿記の最上位資格であり、高度な商業簿記・工業簿記に加えて、企業会計や会計基準、関連法規まで幅広い専門知識が問われます。経営分析や管理会計など、実務でも高度な知識が必要となる分野を学習するため、難易度は非常に高くなっています。

また、1級合格者には税理士試験の受験資格が与えられるため、税理士や公認会計士を目指す方が挑戦する資格としても広く知られています。

合格に必要な勉強時間は約1,000時間が目安とされており、十分な学習計画と継続的な努力が求められます。

各級の合格基準・合格率・受験料について

日商簿記では、得点ランキングではなく正答率によって合否が判定されます。近年のデータを見ると、原価計算初級は約9割と高い合格率を維持している一方で、簿記初級や3級はおよそ半数程度が合格しています。

これに対して1級は合格率が大きく低く、日商簿記の中でも最難関資格であることが数字からも分かります。そのため、受験する際は十分な学習時間を確保し、計画的に対策を進めることが重要です。

級数 合格基準 合格率 検定料(税込)
1級 正解率70%以上 約10% 7,850円
2級 正解率70%以上 約20% 4,720円
3級 正解率70%以上 約50% 2,850円
簿記初級 正解率70%以上 約50% 2,200円
原価計算初級 正解率70%以上 約90% 2,200円

試験の実施時期

日商簿記の試験は級によって実施回数が異なります。

  • 1級:毎年6月・11月の年2回
  • 2級・3級:毎年6月・11月・2月の年3回
  • 簿記初級・原価計算初級:ネット試験方式のため、各認定試験会場が実施日を設定しています。受験日は会場ごとに異なります。 (検定試験)

② 全商簿記|商業高校生を中心に実施される簿記検定

「全商簿記」は正式には全国商業高等学校協会主催 簿記実務検定と呼ばれ、主に商業高校で学ぶ生徒を対象とした資格試験です。受験者の多くは商業高校の在校生であり、授業で身につけた簿記や会計の知識を確認する目的でも活用されています。

日商簿記と比較すると試験内容は基礎的なものが多く、難易度も比較的取り組みやすいレベルに設定されています。また、全商簿記1級を推薦入試や総合型選抜の評価対象としている大学もあり、進学を目指す高校生にとってメリットのある資格です。

各級のレベルと試験内容

3級(商業簿記)

3級では、個人事業を想定した商業簿記を学習します。日々の取引の記録方法や帳簿作成、決算処理など、簿記の基本的な流れについて理解しているかが問われます。

2級(商業簿記)

2級では、3級で学ぶ個人事業の会計処理に加え、株式会社に関する基本的な簿記知識も試験範囲となります。企業会計の基礎をより幅広く学べる内容となっています。

1級(商業簿記・工業簿記〈原価計算〉)

全商簿記1級は、「会計」と「原価計算」の2科目で構成されており、両科目に合格することで1級取得となります。大学の推薦入試などで評価される資格としても広く知られています。

会計

会計分野では、株式会社の会計処理を中心に、企業会計の基本ルールや会計関連法規、経営成績の把握などに関する知識が出題されます。

原価計算

原価計算では、工業簿記の考え方を基礎として、製造業における製品原価の算定方法や、製造コストを計算するための手続きについて理解しているかが問われます。

合格基準・合格率・受験料

全商簿記では、各級ごとに合格基準や受験料が定められており、合格率は受験回によって変動します。2018年から2019年のデータを見ると、級が上がるにつれて試験内容が専門的になり、1級では「会計」と「原価計算」の両方に合格する必要があるため、2級・3級よりも高い学習レベルが求められます。

級数 合格基準 合格率 検定料(税込)
1 級 会計 正解率70%以上 約38% 1,300円
原価計算 正解率70%以上 約44% 1,300円
2級 正解率70%以上 約47% 1,300円
3級 正解率70%以上 約55% 1,300円

試験日程

全商簿記は毎年2回実施されており、試験日は以下のとおりです。

  • 1級~3級:1月・6月(年2回)

③ 全経簿記|経理・会計分野を専門的に学ぶ人向けの資格

全経簿記は、一般社団法人全国経理教育協会(全経)が実施する簿記検定で、主に経理・会計系の専門学校で学ぶ学生を対象としています。

商業高校向けの全商簿記よりも専門性が高く、一方で日商簿記よりは比較的取り組みやすい難易度に設定されています。一般的には、全経簿記2級は日商簿記3級程度のレベルと考えられています。

そのため、本格的に日商簿記へ挑戦する前のステップとして受験する人も多く、経理職以外の社会人が会計知識の習得やスキルアップを目的に受験するケースも少なくありません。また、最上位の上級に合格すると、税理士試験の受験資格を取得できる点も大きな特徴です。

各級のレベルと出題内容

基礎(簿記会計)

基礎級は、簿記を初めて学ぶ人を対象とした入門レベルの試験です。

帳簿への記入方法や複式簿記の基本、総勘定元帳への転記、貸借対照表・損益計算書の作成など、簿記の基本的な知識が中心となります。問題も仕訳の正誤判定や金額の記入など基礎的な内容が多く、初学者でも学習しやすい難易度です。

3級(商業簿記)

3級では、小規模株式会社を想定した商業簿記が出題されます。

帳簿の作成方法や複式簿記の仕組み、決算処理、財務諸表の作成など、企業経理の基礎となる知識を幅広く理解していることが求められます。

2級(商業簿記・工業簿記)

2級は「商業簿記」と「工業簿記」の2科目に分かれており、それぞれ独立して受験・合格できます。合格者には科目別の資格証が交付されます。

商業簿記では、中規模企業の経理業務を想定し、複式簿記の理解、資金調達や資産運用に関する帳簿作成、決算整理、翌期への繰越処理、貸借対照表や損益計算書の作成などが主な試験範囲です。

一方、工業簿記では、製造業における会計処理の基礎を学びます。工程管理や実際原価に基づく帳簿作成など、製造現場で必要となる基本的な経理知識が問われます。

2級の合格率はおおむね70%前後と比較的高く、学習時間の目安は約100~120時間とされています。

1級(商業簿記・会計学/工業簿記・原価計算)

1級では、「商業簿記・会計学」と「工業簿記・原価計算」の2科目すべてに合格することで資格を取得できます。

なお、一方の科目だけに合格した場合でも、その後1年以内にもう一方へ合格すれば1級取得として認定されます。

商業簿記・会計学では、大規模企業の経理実務を想定し、複式簿記の応用力や会計処理能力、連結財務諸表の基礎、税務処理、決算整理、株主資本等変動計算書の作成などが出題されます。

工業簿記・原価計算では、中小規模の製造業における経理担当者や管理者に必要な知識が中心です。製造原価報告書の作成をはじめ、製造業の損益計算書や貸借対照表の作成能力などが評価されます。

上級(商業簿記・会計学/工業簿記・原価計算)

上級は全経簿記の最高レベルに位置付けられる試験で、「商業簿記・会計学」と「工業簿記・原価計算」の2分野、計4科目で構成されています。

出題範囲は日商簿記1級と共通する部分も多いものの、特に工業簿記や原価計算については、全経簿記上級のほうがより高度な内容を扱う点が特徴です。

また、上級合格者には税理士試験の受験資格が認められており、上場企業の経理担当者や、税理士・公認会計士などの専門職を目指す方にも適した資格となっています。

商業簿記・会計学では、最新の会計基準を理解したうえで財務諸表を適切に作成する能力や、経営判断に活用できる会計知識が求められます。

工業簿記・原価計算では、原価計算に基づく会計処理に加え、損益計算書・貸借対照表の作成能力、さらに製造業における経営管理や業績評価、意思決定を支える管理会計の知識まで幅広く出題されます。

合格基準・合格率・受験料

全経簿記は級ごとに試験科目や合格基準、受験料が異なります。2018年~2019年の実績を見ると、基礎・3級・2級は比較的高い合格率となっていますが、1級や上級になると専門性が大幅に高まり、より実践的な会計・原価計算の知識と十分な学習時間が求められます。

級数 合格基準 合格率 検定料(税込)
上級 正解率70%以上* 約16% 7,800円
1 級 商業簿記&会計学 正解率70%以上 約41% 2,600円
工業簿記&原価計算 正解率70%以上 約58% 2,600円
2 級 商業簿記 正解率70%以上 約47% 2,200円
工業簿記 正解率70%以上 約71% 2,200円
3級 正解率70%以上 約59% 2,000円
基礎 正解率70%以上 約70% 1,600円

*上級のみ、各科目の得点が40点以上で全4科目の合計得点が280点以上を合格とする。

試験日程

全経簿記は受験級によって実施回数が異なります。

  • 上級:2月・7月(年2回)
  • 1級・2級・3級・基礎:2月・5月・7月・11月(年4回)

簿記資格は経験の有無を問わずキャリアアップに役立つ

ここまで、「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」の特徴や違いについてご紹介しました。それぞれ対象者や難易度は異なりますが、いずれも簿記・会計の知識を証明できる資格として、多くの場面で活用されています。

経理や会計の仕事に携わる方はもちろん、これから転職を考えている方やビジネススキルを高めたい方、未経験から経理職へチャレンジしたい方にとっても、簿記資格は自身の能力を示す有効なアピール材料になります。

自分の知識や将来の目標に合わせて最適な級を選び、計画的に学習を進めることで、就職・転職だけでなく、その後のキャリア形成にも役立てることができます。

特に経理未経験の場合は、実務経験だけで評価を得ることが難しいケースもあります。しかし、簿記資格を取得しておくことで、基礎知識や学習意欲を客観的に示せるため、採用担当者へ積極的にアピールできるでしょう。

将来目指す働き方やキャリアプランに合わせて、自分に適した簿記資格を取得し、スキルアップにつなげていくことが大切です。

就職・転職を目指すなら日商簿記3級以上の取得がおすすめ

3種類ある簿記検定の中でも、経理未経験から就職・転職を目指す場合は、まず日商簿記3級以上の取得を目標にするとよいでしょう。

企業の正社員採用では、日商簿記2級を応募条件としている求人も少なくありません。一方で、派遣社員や経理アシスタントの求人では、日商簿記3級程度の知識があれば応募できるケースも多く見られます。

まずは日商簿記3級で簿記・会計の基礎をしっかり身につけ、アシスタント業務を通じて実務経験を積み重ねることで、その後に日商簿記2級へステップアップするというキャリアプランも十分に実現可能です。

資格と実務経験の両方を積み重ねることで、経理・会計分野での活躍の幅がさらに広がり、転職やキャリアアップの際にも大きな強みとなるでしょう。

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